『HUNTER×HUNTER』の大人でも泣ける珠玉のシーンとは?

『HUNTER×HUNTER』の大人でも泣ける珠玉のシーンとは?

少年漫画と侮るなかれ!

『HUNTER×HUNTER』の大人でも泣ける珠玉のシーンとは?

 1998年より「週刊少年ジャンプ」にて連載している『HUNTER×HUNTER』。あなたは読んだことがあるだろうか?発行部数7200万部を超えているこの漫画、タイトルを知っている人は多いだろう。しかし読んだことのある大人はどのくらいいるのだろうか。 一つ大ヒット作を描いた漫画家は、以降の作品がそれを超えることは少ない。あの漫画家や、あの漫画家もそうだなあ、とあなたも思い浮かべることができるであろう。『幽☆遊☆白書』ファンであった私は、「子供が主人公かぁ~」と次の作品に期待をしていなかった。大人になり、少年誌からも遠ざかり『HUNTER×HUNTER』に触れる機会を逃していた。それがひょんなことからこの作品を読み、ハマり、泣き、「ああ、さすが富樫」と唸らざるを得なかった。もしまだ『HUNTER×HUNTER』を知らない人がいるならば、もったいない!この作品は大人も満足すること間違いなしの、むしろ大人だからこそその残酷さや切なさに泣ける、大人が読むべき漫画なのである。

 

想像を超える結末!社会風刺を交えたキメラ=アント編

キメラ=アント編に突入する単行本18巻までは、ハンター試験に合格したり修行したり、と少年漫画らしい冒険劇である。しかし、この単行本18~30巻に渡るキメラ=アント編では、がらっとカラーが変わる。

舞台は、北朝鮮を思わせるような独裁国家である東ゴルトー共和国。主人公のゴン達はここで、虫と人間とを掛け合わせて進化したキメラ=アントと戦う。キメラ=アントは人間を食料として数を増やし、やがて王のメルエムが産まれる。メルエムは圧倒的な強さのもと君臨していたが、そんな彼にも変化が芽生える。

将棋に似たゲームである「軍儀」の相手として、世界チャンピオンである盲目の少女コムギが連れてこられた。自分が勝てば殺すだけの相手だったはずが、なかなかコムギに勝てない。メルエムにとってコムギは段々と大切な存在になっていく。虐殺を続けていた彼だったが、「力は弱くてもコムギのように才能のある者は他にもいるのかもしれない」と疑問を感じ始める。

このキメラ=アント編では、実に長時間を敵の心理描写に使っている。敵も単純悪ではなく、悩みや喜びがあり、守るべきものの為に生きていることが描かれている。これは戦争も同じであろう。国や宗教が違い戦う事となるが、自分達の正義のために血を流しており、善悪で両断できない。

そして、この戦いは戦争が生んだ悪魔によって終止符が打たれる。ハンター協会会長のネテロをもってしても倒せなかったメルエムの強さは圧倒的であった。しかし、ネテロが自らの命と引き換えに起爆した小型核爆弾「ミニチュアローズ」の毒にやられて死ぬのである。辺り一帯の全てを吹き飛ばしてしまうこの爆弾は、きのこ雲がバラの形に見えることからこの名が付いた。そう、これは全くもって核爆弾であり、放射能汚染の話なのである。メルエムとその側近たちはこの毒に感染し、血を吐き、弱り、死んでいく。

そして衝撃的であったのが、助けられるであろうと思っていた人間の娘であるコムギが、軍儀をしながら静かな最期を迎えたいというメルエムの願いを受け入れ、共に死ぬことを選んだことである。全くもってハッピーエンドではないのである。悪からの救出劇ではないのだ。コムギとメルエムの二人が幸せに満ち溢れて死んでいくシーンは実に美しい。想像を超えるストーリー展開に涙が止まらない。

「アルカを守ってくれるなら、ナニカも守らなきゃだめ!」

キメラ=アントとの戦いで自分に呪いをかけて極限まで力を使ったゴンは見るも無残な姿に変わり、瀕死の状態となる。ゴンを助けるべく、仲間のキルアは実家に向かう。キルアの妹のアルカは二重人格で、願いをなんでも叶えてくれる凶悪なナニカが居た。ナニカの力は強大であり、無邪気に発せられる「おねだり」に応えなければ死を招く。制約となるルールが解明されていないこともあり、これ以上人を殺さないためにアルカは監禁されていた。

アルカを連れ出すことに成功し、ナニカの力でゴンを回復することができた訳だが、キルアの兄であるイルミは、ナニカの力を悪用する気でいた。キルアはナニカをこれ以上利用させたくなく、またアルカの監禁を解きたかった。そこで、ナニカに対し「お前はもう二度と出てくるな」と命令をする。キルアの言うことは聞くナニカは、涙を流しながらも「あい」と返事をし、すっと消えて代わりにアルカが出てくる。

しかしアルカは「ナニカが蹲って泣いている。アルカを守ってくれるなら、ナニカも守らなきゃだめ!ナニカをいじめるお兄ちゃんなんて大嫌い!」と泣きながら怒る。そこでキルアは、ナニカを犠牲にしてアルカを助けるというやり方は間違っていたことに気付かされる。もう一度ナニカを呼び出し、謝罪するキルア。そこに居たのは変わらず無邪気に「キルア好き」と泣きながら言うナニカだった。ナニカも妹として存在を許されたこのシーン、何度読んでも涙が止まらないのである。

初めてできた友達への思い

そして、全巻通して涙を誘うのは、ゴンとキルアの友情である。兄イルミに洗脳され、暗殺者として育ったキルアにとって、ゴンは初めてできた友達だ。「友達になりたい」というキルアに対し、「もう友達だよ」とあっけらかんと言うゴン。明快なゴンの傍に居ることで、キルアは子供らしい笑顔を取り戻せた。

しかしイルミの洗脳は続き、「お前はいつかゴンを殺す」とまで言われる。話の中でキルアは何度も何度も、不安そうな表情でゴンを見つめる。必要とされてるのだろうか、傍に居ていいのだろうか。その不安が拭い去られた時、ゴンと楽しそうに笑っている時、「あー、キルア良かったねえ」とこれまた泣けてしまうのである。

さいごに

現在も連載中の『HUNTER×HUNTER』だが、非常に休載が多い。最長で2年休載していたこともある。

広い世界観に入り組んだキャラクター達、ゴールは果たしてあるのかないのか。これだけの作品を描くという事は命を削るような作業であろう。なのでファンは待つ。待っているのだ。また「ああ、さすが富樫」と唸る話を読みたい。