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『ヤングマガジン』で2005年から2010年まで連載された『喧嘩商売』の続編、『喧嘩稼業』は、主人公・佐藤十兵衛が「最強の格闘技は何か」というテーマのもとで開催される異種格闘技戦・陰陽トーナメントに出場する話です。一流格闘者の技術・才能・知略が存分に発揮される本作の魅力の元を探ります!
この作品は格闘家・田島彬が主催する陰陽(インヤン)トーナメントを舞台にした、様々な格闘技のトップクラス同士が死闘を繰り広げる、ワンデイトーナメントが描かれています。
ルールは、
つまり、目突きや金的・噛みつきアリで決着がつくまで戦い続ける、ほぼノールールに近い戦いとなります。
主催者の田島は、「最強の格闘技は何か」という問いの答えの一端が見られるとし、出場者は格闘技界のスターや横綱、大手流派のトップなど陰陽でいうところの「陽」の選手達と、金で喧嘩をする用心棒や忍術使い、世界を渡り歩く傭兵など「陰」の選手が入り混じっています。
陰陽トーナメントに出場するのは、この作品の前作『喧嘩商売』に登場した格闘家で、主人公・佐藤十兵衛もイレギュラーな方法でこのトーナメントに出場しようと目論みます。『喧嘩商売』では十兵衛が活躍するストーリーとは別で、柔道や空手、ボクシング、合気道、忍術、軍隊格闘、地下バーリトゥードなど様々な格闘技者のエピソードが不定期に短編のような形で組み込まれていました。
彼らが陰陽トーナメントの出場者であることは、24巻ある『喧嘩商売』のラストの方でようやく明らかになります。この演出によって、まるで現実のテレビで何となく見てきた有名人たちが一堂に介して戦うかのようなイベント感を感じます。
そして、最初はただの喧嘩が強い高校生レベルだった十兵衛も、『喧嘩商売』での修行や自分以上に手段を選ばない強敵との戦いの中で、一流格闘家を相手にできるほどの技術とメンタルを手に入れます。
キャクター同士の因果関係や出自なども描かれているので、まだ未読の方はぜひ手にとってみてください。
さて、この陰陽トーナメントを語る上で欠かせない演出として、描写の繰り返しが挙げられます。バトルものの漫画では主人公たちがカッコいい技名を叫んで繰り出したりするのが日常茶飯事ですが、これに似た効果を持つ演出が随所に見られます。
例えば、十兵衛や師匠の入江文学などが披露する「煉獄」という技がありますが、一度決まれば逃れることのできないこの連撃が発動する際、「富田流の『それ』は左鉤突きから始まった 『それ』とはすなわち− 煉獄」というナレーションが数コマに渡って入ります。心理戦や駆け引きが大きな割合を占める本作で、紆余曲折を経てやっと煉獄が発動する際、これと同じナレーションが度々登場します。
ただ単純に技名が出てくるよりも、このナレーションが直前に入ることによって「必殺が入った」という盛り上がりがケタ違いに上がります。
この他にも、同じく十兵衛たちが使う「無極」という技は、過去の記憶をスイッチにして脳のリミッターを外すというものですが、この技を十兵衛や文学が使うたび、彼らが戦う理由の根源となる重要なシーンが走馬灯のようにコマの中を駆け巡ります。
重要なシーンの回想というのはあまり何度も出すとくどく感じることもありますが、あくまで技の演出という登場のさせ方によって違和感なく、何度も登場させることが可能となっている非常に上手い演出だと思います。
この他にも、多くの場面で繰り返し表現のテクニックが使われていて、登場人物の印象をより強力に植えつけたり、決め所の盛り上がりに拍車をかけたりしています。また、繰り返すことによって読者同士が作品を語り合う上での合言葉に近いような働きをしているようにも感じます。
主人公の佐藤十兵衛は、『喧嘩商売』時代から卑怯な手を躊躇なく使うタイプでしたが、『喧嘩稼業』でも全くそのスタイルを崩さないどころか更に容赦無くなっています。そして、今回は十兵衛だけではなく、トーナメント出場者にも手段を選ばない輩が多数登場し、試合内外で入り乱れる策略が他の格闘漫画に見られない特徴となっています。
何と言ってもやはり十兵衛がトップクラスに外道行為を働いていて、一部を挙げるだけでも、
などなど、高校生とも主人公とも思えない卑劣ぶりを発揮しており、一周回って痛快な気分になります。
個人的に最も面白いと思える部分は、上記のように心理描写や駆け引きを上手く描き、一流の格闘家たちの本気の戦いを表現できていることです。これほど多くの登場人物をそれぞれの人格に矛盾なく行動させ、なおかつ試合展開を一辺倒にせず描くというのは、途方もない技量と準備が必要なことでしょう。
作者の木田康昭先生はこの作品において非常に遅筆で話題となっていますが、それでも辛抱強く待つ価値のある作品だと信じています。
(KURIMO)