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「ちはやふる」で大人気
著書である「ちはやふる」が、アニメや映画化されている末次由紀。少女マンガの中で40巻を越えるものはそう多くはなく、そのストーリーの壮大さや人気の高さが分かりますね。「ちはやふる」において、第2回マンガ大賞を2009年に受賞し、翌年には「このマンガがすごい!2010」第一位を獲得。さらに、第35回講談社漫画賞少女部門を2011年に受賞しています。かるたブームも起きましたね。我が家でも当時小学生だった息子が、キャラクター音声によるCD付き小倉百人一首をお年玉で購入し、一生懸命覚えようとしていたことがありました。関連グッズも大人気です。そんな作者ですが、現在発行されている「ちはやふる」の単行本の表紙中折りに記載されている作品名に、「ちはやふる」以前のものが一切乗っていないのです。実に15作品以上がなかったことにされています。なぜだかご存知ですか?
末次由紀はなんと高校一年生の時に「太陽のロマンス」でデビューを果たしました。まさに努力する天才だったのです。その後は数多くの短編の掲載が続いていましたが、大学進学の為に一時活動を休止しています。無事に入学を果たすとまた活動を再開して、数々の純愛マンガを描きました。
少女マンガらしいラブロマンスが多いですが、必ずと言っていいほど、末次作品にはブラックな一面が差し込まれています。親からの虐待や、いじめによる自殺、エイズを発症した男の子の話もあります(「君の黒い羽根」参照)。
そういった作風や、オリジナリティ溢れるストーリー展開から、男性人気も高い作者の一人です。次々と新しい作品を生み出し、順風満帆かと思われていた頃に、驚くような出来事が起こります。2チャンネルから端を発したトレース疑惑が明るみになり、作者もそれを認め、完全に活動を休止。要するに干されてしまったのです。
この騒動で講談社は、当時連載していた「Silver」を2巻で終了させ、この物語は結局完結せずに現在に至ります。更に、既に発行されていた全ての作品を販売中止の上に回収、廃盤扱いとしました。とてもショックな出来事でした。もう作品を読むことが出来ないのかと落胆していた中、時を経て連載が始まったのが、今や代表作となった「ちはやふる」なのです。
そんな末次由紀作品の中で一押しなのが、彼女にとって初めての続刊連載となった「Only You-翔べない翼-」(全8巻)です。1997年から1999年にかけて別冊フレンドで連載されました。
主人公である南井こころは、高校に入学して初めての自己紹介で「特技は点字が読めること。二年前まで目が見えませんでした」と明かします。事故で失明したのですが角膜移植によって視力を回復し、文字通り光に満ち溢れていたこころは、とても純粋な心を持った少女でした。
そんな彼女が出会ったのは、一学年上の先輩である国見真(しん)。彼はとても端正な顔立ちで料理が上手く、こころの友達も彼に恋をしますが、真は触れられることを極端に嫌がり、周りを遠ざけていました。実は真には超能力があり、触れた相手の思考を読み、傷を治し、物を破壊することが出来たのです。
特殊な能力を持って生まれたことで家族をなくし、心を閉ざしていた彼と関わるうちに、こころは彼を助けたいと願うようになります。真もまたこころに想いを寄せるようになり、共に生きていこうと誓い合った矢先、こころは頻繁に知らない男性の姿が見えるようになります。やがてその男性が女性を襲う場面も見え、それはこころに移植された角膜の記憶だということが分かります。
その男と街中で偶然出会ってしまったこころ。相手は表沙汰になっていない数々の悪行を、なぜか知っている彼女の口を塞ごうと襲い掛かります。こころの危機を感じ取った真が駆けつけて彼女を救い出しますが、そのはずみで能力を相手に向けて爆発させ、男を殺してしまいます。
苦悩する真を支えようとするこころでしたが、常に真の近くにいることで、こころに少しずつ超能力が伝染していきます。真はこころの幸せを願い、彼女の前から姿を消してしまいました。
そして二年の月日が流れた頃、変わらずに真を想い続けていたこころの前に突然現れた真の腕には、知らない女の子がしがみついています。彼女は真と同じ能力を持っていて、真だけが仲間だと言い放ち、こころを邪魔者として排除しようとします。真は大切な人を守る為、癒しの能力である「緑の力」を増幅させていこうとしますが、視界に入る全てのものを攻撃してしまう強い「赤の力」を持った幼い男の子との出会いが、また二人に新たな思いを生んでいきます。幾多の困難を乗り越えながら、未来へ向かっていく二人の純愛物語です。
超能力に関連した作品というのは、ヒーローものだったり、コミカルだったりと、その能力を使ってバトルが起きたり、楽しい事や奇跡が起きていくものが大半を占めると思います。しかし、この作品は、特殊能力を持ってしまったが為に普通の生活することが出来ず、愛する人と一緒に居られなくなってしまう少年の悩みと葛藤を描いています。
また、彼を支えようとする少女にも困難が多く、それでも共に歩もうとする強い想いを描いた作品です。「ちはやふる」でも分かるように人間描写がとにかく緻密で、ストーリーに意外性と幅を持たせることが得意な末次先生らしい作品です。
好きな人を守るとか、大切だからこそ一緒にはいられないというお話は、少女マンガでは王道かもしれませんが、それらとは一線を画す作品だと思います。ただの純愛作品と表現するには人が傷を負いすぎるし、能力者同士による壮絶なバトルシーンのようなものもありません。軸にあるのは二人の絶対的な愛だけ。それがこんなラストに向かうとは想像も付かなかったと、読み終わった後に感じてもらえると思います。
先程も書いたように、末次作品は2005年10月をもって、それ以前の作品は廃盤になっています。この作品も勿論、一般的な書店では取り扱いが出来なくなっています。読みたい場合は古本屋をはしごするか、ネットオークションで粘り続けるしかありません。
更に、「ちはやふる」の大人気を受けて、以前の作品をリアルタイムで知らない読者が買い漁る傾向もあるそうです。一巻完結のものならまだしも、全8巻となると持っている側も手放さない。手放したが最後、二度と戻ってこない確率の方が圧倒的に高いからです。
でも、ストーリー性やキャラクターの魅力は、今の末次作品となんら変わることは無く、20年近く経った今でも色あせることがない傑作です。是非、手に入れて読んでみてください。頑張って探してよかった!と、必ず思ってもらえることでしょう。