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『月刊ヒーローズ』に2015年より連載されている『アトム ザ・ビギニング』は、2017年に原作第6話までがTVアニメ化された事で読まずとも知っている人は多いかも知れません。高度経済成長の時代、黎明期の漫画誌上で人間や機械の未来を問い続けた天才・手塚治虫の代表作『鉄腕アトム』。日本漫画の礎を築いたまさに金字塔的名作に再び光を当てるべく、手塚の子息・手塚眞の監修の元、独特のメカ描写に定評のあるカサハラテツローが筆を揮う。『アトム』を現代的解釈と別視点で描くものとしては浦沢直樹の『PLUTO』(2003~2009)に続く試みとなります。ロボットの世紀と言われる現代、尚も新世代の作家によって甦り続けるその作品の魅力、そして意義とは何なのか? 奇跡の古典の再生に挑む「アトムの始まりの物語」に迫ります。
目次
優れた知性と正義感、そして10万馬力の戦力を持った少年・アトム。彼は天才科学者・天馬博士が事故で失った息子・トビオに似せて作り出したロボットでしたが、結局「お前は息子じゃない。人形だ」と見捨てられ、その後彼を引き取って育ての親となったのが心優しいもう一人の科学者・お茶の水博士でした。
『アトム ザ・ビギニング』は、本来は接点のなかったはずの天馬とお茶の水という二人の科学者が、大学時代に親友であったという設定に置き換えた、性格のまるで違う二人が衝突しながらも後のアトムにつながるロボットを開発していく友情と相克の物語です。
本作が描かれた大きな意義の一つは、一旦「過去のもの」になりかけた「鉄腕アトム」の世界を更新・再生させた事です。というのも、手塚治虫の執筆当時、アトムは2003年に製造されるという設定で、お茶の水博士は昭和10年生まれでその頃既に60代でした。
現実にはアトムに匹敵するロボットは未だ出現しておらず、日本漫画の伝説は今やとっくに「実現しなかった世界」になっていたのです。それは名作としては残り続けても、過去の遺物に成り果ててしまう可能性を意味していました。
ところが、『ビギニング』の時代設定は現在に限りなく近い未来。二人の科学者はまだ大学院生で、もちろんアトムが誕生するのはまだまだ先―。つまり、アトムがまだ現実には現れていない、という事実を逆手に取ったのが本作であり、アトムが実現しそうで実現しない、まさにそんな今だからこそ、アトムの物語は時代を更新して甦る事ができた、と言えるかも知れません。
さて、本作の面白さは『鉄腕アトム』における以下の2つの壮大なエピソードが巧みに取り入れられているところにあります。
浦沢直樹がこの部分のみリメイクし骨太の人間、もといロボットドラマに仕上げたのが『PLUTO』でした。アトムやノース2号(画像)含む世界各国の強豪ロボットが生き残りをかけ壮絶な戦いを繰り広げるという、スケールの大きな中編です。
「アトムの最後(最終回)」としてはいくつかのバージョンが存在しますが、これはその大長編として有名。当時のTVアニメの最終回で太陽に突っ込んでいったアトムが、実はその後1960年代の東京にタイムスリップしていて、若き日のお茶の水博士に出会ったり、ベトナム戦争で人々を救ったりと活躍した果てに、エネルギーが切れて倒れ埋もれていく、という筋立てでした。
本作では『地上最大』所縁の海外のロボットが登場し、また『今昔物語』での若き日のお茶の水が、主人公である院生のお茶の水の祖父という設定で描き直され、「若い頃出会った謎の少年ロボット」について語る、というゾクゾクするようなストーリーに組み上げられていきます。
では、ここで本作から要注目のロボットや鍵とも言えるキャラクターをピックアップしていきましょう。
本作における人間の主人公・天馬とお茶の水が共同で作り出した「A10」シリーズ6号機で、ロボットとしての主人公です。新型人工知能べヴストザインによる自我意識と高い戦闘力を併せ持ちます。
「A10」とは人間の脳内で喜怒哀楽の源となる神経系の事ですが、これに加えて「A・10・6」は「アトム」とも読めるという、奇跡的なネーミングとなっています。
スコットランド貴族である科学者・ブレムナー伯爵によって作られたロボットで、A106と出会い心を通わせます。『地上最大のロボット』でも印象的なノース2号の初号機として登場。ブレムナーの名は本作で初めて指定されました。
ちなみに伯爵の執事・スチュワートの顔がノース2号に酷似している事に注目。おそらくこの執事の死後、伯爵が彼をモデルに2号機を製作するのではないか、と思われます。
他にもマルス、イワンなどのロボットのみならず、ブラックジャックやピノコをモチーフにした人物など、手塚漫画をよく知る人ならば思わずニヤリとしてしまうキャラクターが次々に登場するのも見どころです。
A10シリーズ7号機。鉄腕アトムの妹・ウランをモチーフにしている事は一目瞭然ですが、本作ではA106より優れた新型という訳で、兄よりも賢く強く、空を飛ぶなど逆に鉄腕アトムに近いという点も面白いところ。
兄よりも更に「感情」を発達させている点がミソで、残酷な子供のように暴れ、結果傷つき反省しながら成長する様がロボットの心をテーマとする本作の肝であり、彼女の登場で物語は俄然面白さを増していきます。
手塚の大作『火の鳥』を彷彿とさせる大鼻の男・佐流田教授の孫娘で、その初登場シーンが何故か1ページ丸々使われている事に注目。これは別に作者がロリコンだからという訳ではなく(!)、それだけこの星江というキャラクターの存在が重要だという事なのです。
実は彼女、将来の天馬の妻であり、つまり何とアトムのモデルとなる少年・トビオの母なのです。要するに少女期の星江は、生まれ来るアトムと瓜二つであり、これが一つの意味における「アトム初登場」となる訳です。
物語は、若い時代に出会ったという謎の少年ロボットを探し続けるお茶の水の祖父の登場により急展開を迎え、少年の最後の足跡のあるベトナムでの冒険が幕を開けます。
往年の読者は知っています。やがて、深い友情で結ばれた二人の科学者が永遠に袂を分かつ事を。そして謎の少年ロボットの謎に近づく事で、かの鉄腕アトム誕生までのカウントダウンが間近に迫るであろう事を。しかしカサハラの筆がいかにしてそのドラマを描き切るかは、全てこれから明らかになるのです。
世界のどこかでアトムがまさに、明日生まれるかも知れない現代、決して古くなる事のないであろう「アトムの物語」は、新たな漫画を愛する世代をも虜にし続けるに違いありません!