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『彼氏彼女の事情』は単なる少女漫画ではありません。 ヒロイン雪野とその恋人有馬、雪野の周りに集まって来る登場人物は何かしら、自分の中に迷いを持っています。 物語を通して、「自分とは何か」を読者に問い続け思春期の心に衝撃を与える作品です。 軽い人物像の考察の後、作品のおすすめポイントを解説していきます!
目次
主人公雪野は、幼い頃からかなり優秀で周囲の大人に賞賛されてきました。そのため虚栄心が人と比べて肥大しており、素の自分とはかけ離れた「優等生の自分」を演じていたのです。
新入生の総代としてクラスメイトの善望の眼差しを受けていた有馬。彼もまた、雪野と同じようにおのれが優等生の仮面を付けていたことに気が付きます。
無理して自分を作っていたという共通点を持つふたりでしたが、決定的に違うのは家庭環境の差。
雪野の家庭環境は、経済的には決して裕福ではありませんが愛情にあふれた両親と妹たちと一緒に健全な家庭に育っています。
対する有馬には、幼少時実親からの虐待を受けていた過去が。彼は引き取ってくれた養父母のため、優等生の自分を保つ必要があると考えているのです。
こう言ってしまうと育ての親に問題があるようですが、実は有馬がこう在らねばならないと勝手に思い詰めていただけの話。
いつでも優しく愛情を持って接してくれていた養父母への遠慮が心の余裕を失わせていたのか、本当の自分をさらけ出すことできなかったのだと思います。
物語の中盤に入るより少し前、雪野は有馬とともにいつわりの優等生を演じまいとしていました。
今までは対人関係にも、波風が起きないように敵意を抱かれないようにと、周囲と徹底したコミュニケーションをとってきた雪野の様子が変わったことでクラスメイトたちは、彼女に違和感を抱き始めます。
自分をいつわることから解放されたおかげで、有馬の友人で校内でもイケメン評判の浅葉とも親しくなっていた主人公。
もうひとりのモテメンと彼女の距離感が縮まったところで、ヒロインのクラスメイト・真秀が女子の嫉妬心を煽るのでした。
結果、雪野は徹底的に女子たちから無視されることに。
作中の高校は、偏差値の高い優秀な生徒が多い学校だったこともあって次第にいじめも収まりますが、今度は主犯格として真秀が周囲から糾弾されてしまいます。
それでも、雪野は彼女とあえて和解するのでした。
普通は、クラスメイトに自分を無視するように煽動していた張本人を許すなんて到底できません。
優等生が多いせいか、教科書をやぶいたり持ち物を隠したりの物理攻撃はなかったものの、束になって女子から無視されるつらさは想像以上。
作品中で描かれているよりも、残酷なはず。
雪野は何でもないように振舞っていますが、移動の教室や昼休みのに話せる相手が誰もいない状況です。年頃の女子には、かなり応えたに違いありません。
主人公の懐の深さは作品中の色々な所で見られますが、特にこのエピソードでは印象的です。
のちに雪野と固い友情で結ばれていく真秀ですが、彼女なりに主人公をクラスメイトたちが無視するように煽動した理由があります。
中学校時代までは真秀は、成績もスポーツも優秀で雪野と同じように周囲から羨望の眼差しを浴びてきたのです。
作品の舞台は県内で一番の進学校。優秀な生徒ばかりが集まっているので、誰もが今までのようにトップでいられなくなくなるのは当然ですよね。
頭では分かっていても、明らかに自身より秀でた雪野を前にした敗北感を処理しきれない真秀の気持ち…。女子なら誰でも共感できるのではないでしょうか。
真秀は改心しましたが、彼女のようにマウントを取ろうと画策する女子は皆さんの周囲にもいるはず。
「彼氏彼女の事情」のテーマでもある、本当の自分と向き合い、本当の自分を認める勇気を持つこと。これが、他人への嫉妬心と上手く向き合う方法なのかもしれませんね。
不屈の精神力を持った雪野ですが、彼女もただの高校生です。
周囲から無視されても取り乱さずにいられたのは、彼女の精神力の強さでもありますが自分に対して絶対的に信頼を寄せる有馬の存在も大きかったのではないでしょうか。
有馬の妹分、芝姫からの嫌がらせで疑惑をかけられる雪野に対し、彼は疑うそぶりを身せることなく有無を言わさず味方をするエピソードがあります。
そういった言動が、主人公のハートをさらに強くしたに違いありません。
有馬は自分の暗い出生ゆえに実は、雪野に対して精神的にかなり依存しています。
物語が佳境に入る段階のエピソードでもその様子が見え隠れしていますが、それはいわば雪野に対する絶対的な信頼の表われ。
こんなにイケメンで優しい彼氏から、「君がそんなことするわけないだろ!」って言われてみたいですよね。
実際の男子は、周りの風評に流されて女子から遠ざかるであろう場面でも、流されない有馬の真っ直ぐな心根が伝わってきます。
大人になってから読んでも感動的な作品である「彼氏彼女の事情」。
どのエピソードでも登場人物たちが本当の自分と向き合っていく姿が、とても魅力的です。
一番大きなキーポイントである、有馬が自分の出生を乗り越えるパートでは有馬を応援しながらも自分の中の汚い部分がドロッと流れ出してしまうような感覚にも襲われました。
結局は、愛情あふれた養父母の全てを今まで受け入れる勇気がなかっただけで、本当はずっと幸せだった有馬。
彼の出生に関わる全てに向き合うことで、ようやく自分にむけられていた愛情に気が付くことができたのです。
道徳の教科書にしてみたいと思えるほどに、人の感情の全てが詰まっている作品です。
「彼氏彼女の事情」を読むことで、誰もが抱えている自分に対しての否定的な気持ちを打ち破っていく勇気が育まれていくはず。
なりたい自分や周囲の期待に応えることが全てではないことに気づき、そこから脱して人生を楽しむ勇気を見出すこともかなうでしょう。
ありのままの自分で楽しむことができれば、雪野や有馬のように笑顔をもって生きていくことができるのではないでしょうか。