『人魚シリーズ』

『人魚シリーズ』

高菓子留美子の隠れた名作

『人魚シリーズ』

高橋留美子先生の作品で一番最初に思い浮かぶ、もしくは一番好きな作品は何でしょうか? 『うる星やつら』『めぞん一刻』『らんま1/2』『犬夜叉』… 知名度や人気を考えると、浮かんでくるとしたらこの4作品が妥当かもしれません。どれも大ヒットした作品ですし納得できます。 でも、ちょっと待ってください。 『人魚シリーズ』をご存知ですか? この作品群はあの大ヒット作『犬夜叉』の原点とも言える名作です。 今回は、知る人ぞ知る隠れた名作『人魚シリーズ』をご紹介します。 ネタバレも含みますので、この時点で十分気になっている方は是非ともお買い求めください!

 

『人魚シリーズ』とは

『人魚シリーズ』は週刊少年サンデー増刊号と週刊少年サンデーで不定期掲載された作品です。
単行本は『人魚の森』『人魚の傷』『夜叉の瞳』の全3巻。
るーみっくわーるどすぺしゃる版では2巻までとなっており、「夜叉の瞳」と「最後の顔」が未収録なのでご注意ください。
2003年にはテレビアニメ化し主人公の声は山寺宏一さん、ヒロインの声は高山みなみさんがつとめて深夜の時間帯で放映されました。

主人公は不老不死の男

物語の主人公は湧太という男です。

漁師だった彼はごくごく普通の人間でした。

ある日、漁師仲間が奇妙な肉を拾ってきます。

もしかして、これが噂の人魚の肉ではなかろうか、人魚の肉は不老長寿の妙薬だという話もあると、その肉を仲間と一緒におもしろ半分で食べてしまいました。

その肉こそまさに、人魚の肉だったのです。

それからというものの、湧太は年を取らなくなりました

それどころか死ぬほどの大怪我を負っても、たちどころに治るなど人間ばなれしていきます。

湧太は人魚の肉を食べた当時と同じ若い容姿のままですが、実に500年も生きていました。

彼の願いはただひとつ。普通の人間に戻り、普通に年をとって最期を迎えること。

その鍵を握るのもまた人魚であると聞いた湧太は、人魚を求め旅を続けていました。

第1話「人魚は笑わない」あらすじ

人魚シリーズの世界観や設定などを理解して読み進めるためにも、肝となる要素が詰まっている第1話を見ていきましょう。

人魚を求める主人公

人魚の肉を食べたことにより不老不死になってしまった湧太は、相変わらず人魚を求める旅の途中。

500年も生きていることから情報収集の時間はたっぷりあったのでしょう。道行く人に場所を聞きながら有力な村へと足を運ぼうとしていました。

怪しげな老婆たちとの遭遇で思わぬ事態に

村へと続く森の中を歩いていると、数人の老婆が湧太の前に現れます。

一方的に質問をされるやいなや!モリで突き刺されます。それはもう、滅多刺しです。

老婆たちは、湧太の死を確認すると“なりそこない”の穴に放り込んでおけと言いまた。

不老不死の湧太は、程なくして息を吹き返します。

酷い目にあったと思い辺りを見渡すと、なんとそこには死んでいる人魚がいたのです。

湧太は人魚を担いで村へ向かい、屋敷へ強引に押し入りどう言うことかと問います。

そこには老婆とひとりの若く美しい少女がいました。彼女がこの『人魚シリーズ』のヒロインである真魚(まな)だったのです。

大切に育てられた少女

人の寄り付かない小さな村で大切に育てられていた真魚。

彼女は外に出ることなく、生活のほとんどを布団の中で過ごしていました。

美しい見た目とは裏腹に気が強く乱暴者で、世話係の老婆にしょっちゅう物を投げつけていました。

15歳になったある日、食事の中に見たことのない魚の肉が出てきました。

なんの肉かと問うと、老婆は珍しい魚がとれましたほどに…とだけ言います。

真魚がその肉を口に運ぶと、老婆はニヤリと笑いました。

それには気づかず、真魚はこんなうまい魚は初めてだと夢中でほうばります。

その肉が人魚の肉だとは知らずに…。

湧太と真魚の出会い

村の老婆にモリで滅多刺しにされた湧太が人魚の亡骸を抱えて屋敷に押し入った時、彼と真魚は初めて顔を合わせました。

主人公が人魚の亡骸を放り投げた際、真魚は無礼者!と彼に向かって物を投げつけます。

複数の老婆たちにまたも、モリで襲われそうになる湧太。

抵抗しようと真魚を人質に取ろうとしますが、彼女の足に枷が付いていることに気づいて驚きます。

自力で歩行できないと見るや、少女を担いで逃げる湧太。

すると追ってくる老婆が、湧太に向かってモリを投げてきました。

あんなに大切に育ててきた真魚を担いでいるにもかかわらず、容赦のない攻撃です。

案の定、モリは真魚の頬をかすめ傷つき流血。湧太にさらわれたことよりも、モリを投げつけられたことに戸惑い動揺する真魚でした。

なりそこない

老婆から逃れ、身をひそめるべく穴の中へ転がり込んだ湧太と真魚。

主人公は彼女を拘束していた足枷を外します。

そして人魚の話と身の上話をします。

しかし、真魚は上の空。先ほどの老婆の行動がどうしても理解できず、我関せずといった感じで目を閉じて考え込んでいました。

そんな時、穴の奥から不気味な声が。

突然、ふたりの前に醜い化物が現れます。

湧太はモリを打ちカマで斬りつけますが全くこたえません。

真魚は、こいつを殺すには毒を使うしかないと言います。

そこへ声を聞いた若い女がが駆けつけました。彼女は毒を付けたモリで化物を刺しますが、反撃され深傷を負います。

ふたりは傷ついた女に、“なりそこない”は一匹だけではないので村へ帰るよう言われます。

その時、湧太は昔人魚の肉を共に食べた仲間のひとりを思い出していました。

なぜなら、その仲間だった男が、今現れた“なりそこない”と呼ばれる化物と同じ姿になっていたからです。

村の秘密

湧太は深手を負った女を背負い、真魚を置いて村に戻ります。

老婆たちが待ち構えていました。

湧太は真魚の居場所を盾にして、真魚の世話係から人魚のことを聞き出します。

そして、この村の秘密と真魚を大切に育てていた理由が明かされます…。

物語は終着点から始まる

第1話で湧太が探し求めていた人魚を発見します。

期待していた結果は得られませんでしたが、旅の目的は果たされました。

しかし、この村で湧太は真魚と、真魚は湧太と出会います。

ここで人魚を求める湧太の旅が終わり、不老不死になった湧太と真魚がともに旅をし生きていく物語が始まるのでした。

『犬夜叉』が好きなら絶対ハマる


冒頭でも述べたように、この作品は『犬夜叉』の原点とも言える類似点がいくつかあります。

化物(妖怪)、呪い、不死、中には死人を蘇らせる話もあり、そこから連想されるのが『犬夜叉』の登場人物である悲運の巫女「桔梗」。

和風ファンタジーという世界観も、『犬夜叉』とリンクします。

ただ、このシリーズはコメディ要素は少なく、救いようの無い話も含まれている点では少し大人向けのかもしれません。

人間の醜い欲望や執着が、高橋留美子先生らしく描かれています

さらに、物語は湧太が真魚と出会ってからの現代と、出会う前の過去のエピソードが上手く混ぜ込まれ、同作家の腕前をいかんなく発揮。

読めばきっと誰かにすすめたくなる高橋留美子先生の隠れた名作『人魚シリーズ』。この機会に是非読んでみてください!