謎と驚きが連続する美しいファンタジー『宝石の国』

謎と驚きが連続する美しいファンタジー『宝石の国』

市川先生、よくそんなこと思いつくなぁ!?

謎と驚きが連続する美しいファンタジー『宝石の国』

「宝石の国」の魅力は、作中の謎や思いもよらない展開にある。 世界観や設定が素晴らしい作品だが、キャラクターが魅力的。台詞やギャグのセンスも高く、隅々まで面白い。 遥か昔から続いてきた「宝石」と「月人」の戦いの物語で舞台になっているのは、度重なる流星によって変貌してしまった地球と思しき星。 そこで生きるのは、不死のカラダを持った美しい「宝石」たち。彼らを狙って、「月人」と呼ばれる謎の敵が空から襲い来る。 驚きの展開が魅力なので、欲を言えば三巻――いや、二巻まででいいから、前情報ゼロで手に取りハマってほしいところだ。 その点を加味し、今回はなるべく最低限のネタバレで作品の魅力を紹介していこう。

 

宝石たちがかわいい

皆美形で、少女のような姿をしてい宝石たち。(生殖を必要としないので性別の観念はないと思われるが、一人称が僕や俺、三人称が彼になっているため、あえて”少女のような”と表現)

そのなかで、金剛先生だけが僧侶のような姿をしており、誰よりも長寿で強い。

そんな先生を皆が慕っている。

宝石たちの身に宿すインクルージョン(微小生物)が彼らの生きた活動を可能にし、光を動力に変えて個々に、与えられた役割を果たしながら暮らす。

そのジョブは戦闘や医務、服飾などさまざまだ。

医者がマッドサイエンティスト気質だったり、月人研究者がオリジナル月人を創作したりと“いききった”タイプが多く、自分の普通さを悩む者がいるほど。

それぞれの愛らしいキャラクターや彼らの関係性が魅力的で、さらにストーリーを好印象なものに底上げしている。

2巻以降の巻頭にある「登場人物紹介」は、イラストも紹介文も毎回違う細かい芸当を見せ、いちいち面白いので注目してほしい。

不死身の戦闘スタイル

月人は晴れた日の空に突然現れ、宝石たちを連れ去ろうとする。出現する周期や頻度に決まりはなく、その存在には謎が多い。

宝石たちは不死のカラダを持ち、彼らに内在する「インクルージョン」が傷口をつないで、砕け散ったカラダをも生き返らせる。

よって、行動不能にならない限り戦う

腕がもげようと、全身バッキバキに割れようと動ける限りは、仲間を守るために相手に立ち向かうのだ。

壊れながら戦う姿に胸を打たれるが、たびたび意表を突く展開を仕掛けられるので、戦闘で誰かを失ってしまうんではないかと心配せずにいられない。

最後まで気が抜けないバトルシーンは、見入ってしまうこと間違いなしだ。

不死者の別れが切ない

最年少で三百歳、最年長は三千五百九十七歳。宝石は不死なので、その人生は長い。

死にはしないが、永劫の別れはある。月人にさらわれて帰ってきた者はいない。

これまでに多くの仲間を失い、皆それぞれに傷を抱えているのだ。

月人は、残酷にも過去にさらった宝石を武器に変えて攻撃してくる。

その一方で宝石たちは不死のため、さらわれた仲間も破片を集めて元に戻せるのではないかという希望が捨てられていない。

読み手としては、作家も憎い設定をつくるものだと感服する。

宝石がさらわれるシーンは、そのカラダが砕け散る姿が儚く美しいのだが、仲間を想って残していく台詞がまた美的で脳裏に焼きつく。

この悲しくも目を奪われるひとコマを是非、目の当たりにして感じてほしい。

みんなが大好きな先生が怪しい

きっかけは、いつもと違う姿の獣っぽい月人。

そのフワフワした体に埋もれてるようにして自身の身を潜ませていた主人公のフォスは、先生がその天敵に対し「しろ」と親しげに呼びかけるのを聞いてしまった。

そこからフォスは、月人と先生の関係に疑問を持つ

しかし、その疑惑は周知のこと。どうしてか、暗黙のうちに先生を信じるように仕向けられていた。

それでも本当のことが知りたいフォスは、密かに月人との接触を画策して謎ときにのめり込んでいく。

「先生は一体何者なのか」という疑問はもちろん、真実を求めて苦悩する主人公の奮闘も見どころだ。

主人公フォスフォフィライトの成長

これから作品に触れる人にはワクワク感を持って読んで欲しいので、正直多くを知らぬまま物語に入り込んでほしいところだが、のちに起こることからすればここでのネタバレは、序の口。

ということで、物語の核となる部分をチェックしていく。

主人公フォスフォフィライトは、落ちこぼれの役立たずだった。

硬度が低くてもろいカラダなうえに、何をやっても適正を示さない不器用の極み。

天真爛漫で度胸だけは有り余っており、皆に迷惑をかけてばかりいた。そんなフォスがある時、アクシデントにより両足を失ってしまう。

失ったパーツを補い新しいカラダになった主人公が力をつけていき物語が加速

宝石が身体の一部を失った場合にはインクルージョンを含有しない同系統の鉱物で補い再生させるが、フォスのカラダにはアゲート(メノウ)が適合。

新しい足を手に入れると、それまでもろさがゆえ発揮できなかった力を出すことがかなって、目にも留まらぬ速さで走れる脚力も手中にした。

明るいだけが取り柄だったフォスがもうひとつの才能を得たことで、ようやく念願の役割であった『見回り組』への挑戦が許されることに。

そこに至るまでは主人公が落ち込む展開ばかりだったので、フォスの足が速くなったことが判明し、希望が見えた瞬間の高揚感がたまらない。

その後もフォスはいろいろものを失いながら、それを補うように対価として力を得ていくわけだが、この驚きの連続にどんどん引き込まれる。

動き続けるストーリーに目が離せない!

「宝石の国」は、とにかく読み進めるほどに面白い。

月人と先生の関係は?
月へ行った宝石たちは取り戻せるのか?

ひとつクリアになったと思えば、次の謎が待っている。

キャラクターの個性もいかんなく発揮され、ますます愛おしくなる。

不死の特性を存分に活かした驚愕の展開が続くこの物語に、あなたもきっと虜(とりこ)になるだろう。

(ライター・福岡シエ)