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舞台は食肉が禁じられ、草食獣と肉食獣が混ざり合い暮らしているという世界観を舞台にしたBEASTARS。 エリート校・チェリートン学園でアルパカのテムが食い殺されるという事件が起きることから物語が始まります。 ハイイロオオカミのレゴシを主人公とした、青春群像劇の魅力を見ていきましょう。
物語は基本的には現在と変わらない文明が発達した世界で進みます。
ただ1つ違うのは本来なら食うものと食われるものが共存していること。
物語の冒頭で起きる食殺事件は、実は本能を歪な形で押さえているこの世界では珍しい話ではありません。
登場人物たちは肉食なら衝動的に本能に負けて隣人を食い殺してしまう可能性が、草食なら隣人により突然食い殺される可能性と常に隣り合わせの状態で生活しています。
これは、どちらの立場だとしてもかなりストレスが続くことが想像できる状況。
さらに実際の動物世界よりはマシとないえ、種族でサイズがかなり違うため踏み潰してしまうといった事故が起きることもある環境です。
さらに裏市と呼ばれる非合法な市場では肉が売られていることもこの世界の闇を示しています。
肉は病院などからこっそり提供されているものが多いのですが、なかにはもっと酷い手段で調達されるケースも。
老いた草食の身売りや、喰われるために育てれる仔などもいるのです。
裏市は成年の肉食にはかなりの確率で知られて生活に浸透しており、建前と実情が一致しない現実を示しています。
そんな危ういバランスの上に成り立つ世界ですが、それでも種族の違いを越えて成り立つ関係も数多く存在する**点も見落とせません。
この作品の主人公は強い戦闘力を持ちながらも大人しい性格をしたハイイロオオカミのレゴシ。
普段は優しく控え目で目立つことを好まず、オオカミである自分にコンプレックスを持っている学園の演劇部員です。
強者でありながら無害でありたいと願う彼の考え方は無力な草食獣の地雷を踏むことが多く、キレられたり怒られたりすること多数。
その一方で頑なで融通が効かない部分があり、その結果舞台上で演劇部員としてあるまじき振る舞いをしたり衝動的に暴走したり。
問題行動もかなり見受けられるキャラクターです。
草食を美しいと感じ彼らの助けになりたいと思う優しい少年でありながら、その奥に力がある種族としての無意識の傲慢さも隠し持つレゴシ。
そんな彼が肉食である自分を受け入れながら成長していく姿は、ヒーローとしてのカッコよさと青春を過ごす年代独特の青臭さがあって目が離せません。
またレゴシのヒロインのハルに対する気持ちはうさぎに対する捕食者としての本能なのか、それとも自分自身の恋心なのかという悩みや葛藤が描かれています。
この、主人公がジレンマをどうクリアしていくか?という部分は、彼が成長していく上でもストーリとしても見逃せないポイントです。
この作品はメインヒロイン・サブヒロインともにあまり見ないキャラをしています。
まずメインヒロインのドワーフウサギのハル。
園芸部に1人で在籍している、小柄な花を愛する女の子と言えばベタなヒロインに聞こえますが、彼女はかなり性的に奔放です。
相手に恋人が居る居ないを意に介さず関係を持つため、同性から嫌われており学校では孤立。これも理由があっての行動ながら、メインヒロインとしてはあまり見ない属性です。
サブヒロインにあたるのは、レゴシと同じハイイロオオカミの美少女ジュノ。
彼女はレゴシにわかりやすく好意を示していますが、そこには同種であるという前提があります。
大人になったら同種族同士での結婚が主なのでおかしな話ではないのものの、若さからくる「相手が何であれ好き」というスタンスとは言えません。
その現実が見えている考え方は漫画のヒロインとしては珍しく、擬人化された動物を描いたファンタジーな世界観にも関わらずリアリティを出していると思います。
群像劇要素があるこの作品は、レゴシに続いて重要キャラとも言える演劇部部長のアカシカのルイ先輩をはじめ、ほかの登場獣も面白いキャラが勢ぞろいです。
物語の最初の舞台となるレゴシが所属する演劇部のメンバーは、顧問がスカウト。
そこには「生き様を見せる」というテーマありきのセレクトで行われ、部員を見渡すとなんらかの事情を抱えた者ばかりです。
そんな部ですから全体的にキャラが濃くて種族の違いからくる見た目の差もあって、キャラが混ざることがありません。
ちなみに、演劇部の中でのイチオシキャラは草食獣で肉食男子なドールビッグホーンのピナ。
女好きでイケメンで飄々としていて、ある意味ハルと同じく同性には嫌われるタイプの男の子です。
その嫌われっぷりは、基本的に穏やかなレゴシをいらだたせるほど。しかし決める時は決めてくれたりと、美味しいキャラをしています。
また、クマという強い種族でも体が肉を求めない自分という存在を考えるパンダの心療内科医ゴーヒンや、体調管理を行い販売している卵の質を上げようと頑張るニワトリのレゴム。
彼らが動物であることが前提でも、漫画を読んで世界に入りこめばその考え方に共感できる。そんな不思議な魅力を持つ面々です。
作者の板垣巴留先生は最近では珍しく、完全アナログで漫画を描いています。
かなり好みが別れる画風かもしれませんが、個人的にはこのカラーの暖かみ、それとは対照的な線の乾いた雰囲気、そして線の柔かさはこの作品と合っていると思います。
また戦闘シーンなどの迫力がある場面では動物らしい勢いがあるのに、濡れ場では擬人化された動物らしからぬ色気が。ここも、興味深く面白いです。
擬人化した動物なのに美形と平均的の容姿とが区別でき、その違いがしっかり伝わるのもスゴい!
パッと見ただけでどんな動物かがわかりつつ、人間に置き換えたらどんな容姿なのかが何となく想像できるのはこの作者の技量あってこそでしょう。
ここ数年、擬人化というカテゴリが台頭してきましたが、本作は斬新ではあっても遊び心や奇をてらった作風とはまたひと味違います。
ひとつの学園で学びながらも、捕食者と被捕食者の緊張関係が根底にあってさらにそれゆえのジレンマや、壁を乗り越えようとするキャラクターたち。
ヒエラルキーや男女の問題などある意味、人間社会の縮図が描かれていて読み手も物語に入り込んでしまいます。
動物のキャラクターでも心情やパーソナリティーがきっちり描かれていて、続きが気になるストーリー展開も見事。
板垣先生はこのBEASTARSが初連載だそうですが、素晴らしい才能が漫画界に加わったとあらためて感じました。
アニメ化も相まって、さらに注目されるであろう本作の快進撃から目が離せません。