魔法使いの成長をたどる『 Aventura』

魔法使いの成長をたどる『 Aventura』

魔法を秘めた子供達は何処へ向かうのか?

魔法使いの成長をたどる『 Aventura』

「魔法」。 多くの人々が憧れる不思議な力で、誰もが一度は魔法使いになりたいと願ったことがあるでしょう。 それを反映するかのように、魔法を題材にした物語は世の中に沢山あります。 私自身も魔法が大好きで魔法が題材の漫画は数多く読んできました。 今回はその中でもおすすめしたい作品として、魔法を秘めた子供達を主軸にした『Aventura』に注目。 翠川しん先生が描く、魔法学校が舞台の物語を紹介していきます。

 

Aventura・あらすじ

舞台となるガイアス魔法学院とは、入学には魔法を使える事が必須と言われており、魔法剣士や魔法魔導士を志す子供達が門を叩く由緒正しい学院である。

しかし、この魔法が溢れる学院に1人、魔法を使えない少年がいた。錆色の髪と錆びた大剣を持つ彼の名はルーウィン。

異質な者として爪弾きを受けながらも学院で生活する彼だが、ある2人の魔法使いと出会ったことで彼の運命は大きく変わるのだった―。

紆余曲折が通常比の3割増?!Aventuraは壁を乗り越えていく物語

魔法が使えないため、学院の剣術部に籍を置く主人公のルーウィン。

ふとしたことで同じ学び舎の魔法部に属する、エルフのクリスと魔獣使いのソエラに出会い物語が動き始めます。

この主軸3人とルーウィンを虐めていたクラスメイトのダーウィルが、学院に侵入した不死者(アンデット)に襲われる事件が勃発。

このとき、ルーウィンが精霊獣〈炎神フレア〉を召喚したことで彼が退学騒ぎになるも、紆余曲折を経て念願だった魔術の部への転入を許される結果に。

主人公が晴れて、魔術部の生徒となってクリスとソエラと同じフィールドに立ったところで、さらなる展開に突入するのでした。

序盤は学院の生活を軸に描かれるも忍び寄る影が…友の窮地で主人公らが動き出す

アンデットの襲撃騒動が終息したのもつかの間。

ダーウィルが起こした摩擦に端を発し、クリスがエルフ族のすみか以外で生きていくために不可欠なクリスタルを紛失してしまい、意識を失うことに。

友が生命の危機にあることを知ったルーウィンとソエラがクリスタルを探すことを画策する一方で、責任を感じていたダーウィルもまた自分がまねいた深刻な状況に狼狽しつつ一人でクリスタルを探し求めるのでした。

そのクリスタル、実はただ紛失したわけではなく第三者の手に渡ってしまっているというややこしい事態にあり、さらに緊迫感が高まります。

「クリスを助ける」という願いのもと主人公たちが奔走するわけですが、この一連のエピソードは不思議な運命で出会った子供達が対峙する最初の試練。

この逆境は、物語の中でも重要な役割を持っているといえるでしょう。

未熟でままならない子供たちの仲間を思う気持ちに胸が熱くなる

子供達はまだ無力で、救いの手がなければ事件を解決することはできません。

それでも、ルーウィン、ソエラ、クリスはそれぞれ自分で考えた末に、気持ちのまま行動を起こします。

彼らがそれぞれにコンプレックスを抱えており、またお互いに「あの子は自分にないものを持っている」という憧れを抱いているからこそ、相手を思う気持ちが強いのでしょう。

クリスとソエラが退学処分を通告されたルーウィンを助けようと先生に訴えた場面しかり。
クリスを思う気持ち一心で、クリスタルを取り戻そうと渦中に飛び込んだルーウィンしかり。

ひたむきに行動し、心から訴える様子に胸が打たれます。

彼らの献身と訴えは周りの心を動かすこととなり、周囲から助力を得て壁を乗り越えていくわけですが、そのプロセスがあるからこそ読み手が物語に入り込むことができるのではないでしょうか。

確実な結果が得られる保証はなくても、自分にできることを考えつくままにとにかく一生懸命にやってみる…

効率や結果重視の現代では軽視されがちなことですが、人間力が問われる場面においては大切になることも多くあります。

Aventuraは大人が読んでも、はっとさせられる場面が配された作品と言えるでしょう。

魔法を面白さの切り札にしないからこそ心に響くドラマが

『魔法』いう魅力的な力を使える背景がありながら、軸となるキャラクターが魔法を自由自在に扱えない不自由さ。これが際立つほど主人公たちは魔法の力に代わる策を考え、訴えていきます。

そして、打開していく彼らの姿とその成長が作中に登場する面々の心を動かしていました。

現実世界で生きる私達にも言えることですが、人は考え挑戦することで成長していくのだということを物語を通して再確認できます。

最大限努力しても難しいところは助力を得て、自己完結できなかった悔しさと反省をかみしめつつ助けてくれた人への尊敬を忘れない…といった心の動き全てが成長の糧となるという点。

それらキャラクターの持つ感情が丁寧に描かれているからこそ、リアルに置き換えて考えることができます。

ページをめくるごとに彼らの人生を見守っているような感覚になるAventura。

ルーウィン達の姿に何となく励まされたような気持ちになり、読み終わった時には受け手の中にも「頑張ろう」とか「何かをなし得よう」という気概が生まれる作品です。

Aventura・まとめ

緻密に描かれた世界観と、リアリティのあるキャラクターが織りなす魔法の物語であるAventura。

草木が風に揺れる様子や光に照らされる様子や、キャラクターの着ている衣類のデザインは言わずもがな。きらめきや素材の質感など細部まで書き上げるこだわりは見事としか言いようがありません。

作者のキャラクターや作品の世界に対する愛情が一コマ一コマに感じられ、ページをめくるにつれ物語の中に引き込まれていくことでしょう。

独特なこの魔法のようなイラストや世界観は、ツイッターやpixivでも発表されています。

この記事を読んでAventuraや翠川しん先生の描く時空に興味を持ったら是非、一度先生の魔法の世界へ足を踏み入れてみてください。