未完の傑作『預言者ピッピ』

未完の傑作『預言者ピッピ』

果たして物語は完結するのか?

未完の傑作『預言者ピッピ』

もしあなたの携帯に搭載されているSiriが、AmazonのAlexaが、Google Homeが、 世界の終わりを予言したら? シンギュラリティ……技術的特異点と呼ばれる人類の転換期が2045年に訪れ、 人工知能が人間の知性を超えると言われている。 『預言者ピッピ』は、もしそんな時代が訪れたら世界はどうなってしまうのかを描いた漫画と言える。 SFであり、あるいはサスペンスとも言えるような漫画『預言者ピッピ』を今回は紹介する。

 

<未完の傑作・『預言者ピッピ』>

  • イースト・プレス出版のCOMIC CUEにて連載。
  • 2007年に第1巻、2011年に第2巻が発売している。
  • 肝心の連載誌が2003年より実質休刊状態である為、第2巻の一部は描き下ろしとなっている。
  • 未完。

<地下沢中也(ちかざわちゅうや)>

  • 1922年に『パパと踊ろう』でデビュー。
  • 同作は、週刊ヤングマガジンのGAG漫画大賞を受賞。
  • 主に短編ギャグマンガを得意とする。

もしAIが自我を持ったら?

<ピッピとは>

  • 地震予知を目的として日本の地震予知研究所が開発した人工知能ロボット。
  • 地震予知に関する事以外のデータ入力は制限されている。
  • 親友は、博士の息子であるタミオ。
  • タミオの死をきっかけに、自我を獲得する。

憶えることと同様に 忘れることだって 生きていく上で
なくてはならない 人間の能力なんです
しかし 彼には ピッピには それができない

ー研究員『預言者ピッピ』第1巻

<どのように自我を獲得したか>

  • ピッピ自身の中にデータとしてのタミオを造り上げた。
  • ピッピが自分の中のタミオに「なぜ?」と問いかけ対話を行うことで、「学ぶ」ことを覚えた。
  • 「なぜ?」という問いかけに答える為により多くのデータを欲し、入力制限の解除を求めた。

<瀬川博士の懸念>

  • 入力制限解除の要求は、「自我」を得たピッピの「暴走」だとした。
  • 入力制限解除によって、ピッピはこの世の全てに対する未来予知が可能になってしまうと主張。
  • 不確定な未来だからこそ人は希望が持てると、ピッピの入力制限解除に反対した。

ラプラスの悪魔

「ラプラスの悪魔」とは、
「ある時点において作用している全ての力学的・物理的な状態を完全に把握・解析する能力を持つがゆえに、宇宙の全運動(未来を含む)までも確定的に>知りえる」という超人間的知性のこと。

ーwikipediaより

<入力制限を解除されたピッピ>

  • 不治の難病の治療法を発見する。
  • 1年先の大地震を予知する。
  • 新聞記者 真田の死を予知する。
  • バタフライエフェクトまでも予知し、人類の未来を全て計算する。
  • 人類滅亡を乗り越える為に、人類の進化の必要性を主張する。

なぜ目の前の 救えるものを 救わないの?
ータミオ(データ)『預言者ピッピ』第1巻

新人類の誕生

<ヒトの言葉を話す猿・エリザべス>

  • 野生の猿の輸送船にて自らの命を守る為、ヒトの言葉を話せるようになる。
  • 誰よりも心優しく、身寄りのない人たちの死を看取り始める。
  • 死を宣告された真田を気に掛ける。
  • ピッピ曰く、「未来に繋がらない進化過程の突発的な変種」

言葉で説明しようとすればするほど どうしてもなにかが違っていく
やっぱりわたし 言葉はあまり好きじゃないわ
ーエリザベス『預言者ピッピ』第2巻

<寿命を予言された男・真田>

  • ピッピにより、99日後に自殺して死亡する事を予知される。
  • 予知がはずれてピッピへの信頼が失われる瞬間をより印象付ける為に、テレビ局に檻を作らせ全国に中継させた。

<ゲルダ現象>

  • ピッピが予知した、証明不可能な現象。
  • 8年後に人類を滅亡に導く大津波の原因となるとされている。
  • 人類の滅亡から逃れるためには、「生命の定義を数値化」し、「生命を身体から取り出す」ことが必要だとピッピは主張する。
  • 「生命の定義を数値化」する為の被験者が、真田であるとした。

『預言者ピッピ』の魅力とは?

大人の事情で連載が止まってしまってからだいぶ経年する作品ながら、続きが読みたいという声が依然として絶えない魅力はどこにありのでしょうか?

約20年前に描かれたとは思えないアイディア

第1巻に収録されているエピソードは全て西暦2000年前後に描かれた話だ。
この20年程でAIやアンドロイド、ビッグデータに関する技術は急速に発展したが、
本作はまるでその進歩を予測していたかのような展開なのだ。
本作で危惧されている災害も、現実世界で実際に起こった災害を彷彿とさせる。

先の読めない展開と散りばめられた伏線

本作の最大の魅力は、何といっても先の読めない展開。

生命の数値化、ゲルダ現象、真田の死の結末……など、今後が気になる要素が目白押しだ。
また、「生命を身体から取り出す」とはどういうことなのか。(『攻殻機動隊』が連想される)

第3巻はいつ?

第1巻が発売して第2巻が発売されるまで約4年、そして第2巻が発売して既に7年経過している。
(2018年9月現在)

果たしてこの物語は完結するのか?

広げられた風呂敷はきちんと閉じられるのか?

現在、第3巻の発売は未定だ。

我々はただ物語の続きを待つことしかできない。

物語の続きを読めるのが先か、現実世界にピッピのような人工知能ロボットが現れるのが先か、誰にも分からない。