気鋭の頭角、『アクタージュ』と『呪術廻戦』

気鋭の頭角、『アクタージュ』と『呪術廻戦』

『ジャンプ』の喉元に喰い込む二本の牙

気鋭の頭角、『アクタージュ』と『呪術廻戦』

 『銀魂』が完結した。『NARUTO』、『BLEACH』も終わった。あの『こち亀』だって最終回を迎えてしまった。『HUNTER×HUNTER』はたまにしか載らないし、あとは『ONE PIECE』くらいしか――そんな風にジャンプを読まなくなった、元・読者の方も多いのでは。  長期連載作品が完結していく中で、着実に作品を育て、地力を蓄えてきたのが今のジャンプ。とはいえ芽が出たばかりの作品であっても、軽んじては足元を掬われます。  最近の人気作ですと、サスペンスファンタジー『約束のネバーランド』、科学ファンタジーの『Dr.STONE』あたりの名が浮かぶ方もいるかもしれません。この二作に共通するのは、①作画・作話分離体制による濃密な完成度、②奇をてらうかと思いきや独自の持ち味と熱意を併せ持つ、といった要素。 ジャンプの新たな雑誌色なのでしょうか、これから紹介する新進気鋭の作品も、どこか似た色合いを持っています。『アクタージュ』は前者、『呪術廻戦』は後者を期待する方には特に薦めたい作品。次代のジャンプを担うかもしれない、今、そしてこれからがアツい漫画に触れてみませんか。

 

アクタージュ act-age

原作:マツキタツヤ 漫画:宇佐崎しろ

 役者志望の主人公・夜凪景(よなぎ・けい)は、苦しい家計を助けるため、芸能プロダクション『スターズ』のオーディションを受ける。夜凪には役者としての天才的な才能があった。だが、それは己の体験を思い返して役に完全に入り込むという、自己と役の境界すら曖昧にする危険なものだった。

 審査員として彼女に出会った映画監督・黒山墨字(くろさわ・すみじ)は、夜凪の才能に衝撃を受け、未だ原石たる彼女を磨き上げるべく、役者の世界へ誘う。演じるという芸術に向き合う者たちと関わる中、夜凪は自身を成長させてゆく。

ブルドーザーの操縦法

 プロの芸能関係者も驚愕する芝居を見せるのが、この漫画の主人公である女子高生の夜凪景。演技だけで情景のイメージを他人に伝えてしまうことすらできてしまいます。

 ですが独学で演技を修めた夜凪は、それをコントロールする術を持ち合わせていませんでした。自分と掛け離れた役を演じることは困難で、あまりにも役に没入しすぎて問題を起こすこともしばしば。類稀な演技力に反して体当たりでしか演じられない不器用さは、作中で‶ブルドーザー″と言われてしまうほど。

 アクタージュの見どころは、そんな夜凪の成長にあります。監督である黒山の指示により向かう先々で、彼女は自身の演技が持つ課題に直面します。周囲をトラブルに巻き込みながらも、自身の演技と向き合い、ひとつひとつ答えを出していくのです。

天才×美形×異常性=絵力

 芸能の世界を舞台とするアクタージュですので、当然、キャラクターは美形揃い。そんな中で一際主人公が目立つのは、彼女の底知れなさが絵に現れてくるためです。

 普通の役者がどうやって上手く演じようかと苦悩するところを、役に没入さえすれば勝手に体が動いてしまうのが夜凪景という少女。そんな彼女だからでしょうか、普段は天然気味で感情表現が豊かながらも、ふとした瞬間にぞくりとする顔を覗かせます。

 そして夜凪と対比するように描写されるのが、2・3巻のキーキャラクター、『スターズ』の女優・百城千世子(ももしろ・ちよこ)。彼女は役柄に自分の内面を一切映し出すことなく、ただひたすらに綺麗な、観客の求める演技をこなしてみせます。

 それでいて芝居が薄っぺらいということもなく、夜凪が評して曰く、「綺麗、なのに顔が視えない」「天使の仮面」。そんな見るものを惹きつけながらもどこかそら恐ろしい表情が、繊細なタッチで余さず描かれています。

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『アクタージュ act-age』の面白さを徹底的に紹介するレビュー

友情・努力・勝利といえば、ジャンプ三大原則と言われジャンプ連載漫画の定番…だったのはもう過去の話。 今の連載には「ゆらぎ荘の幽奈さん」や「僕たちは勉強ができない」といったラブコメも連載されている。 そんな中で異彩を放っているのが、今回紹介する「アクタージュ act-age」だ。

……ちなみに。
 作画をされている宇佐崎しろ先生ですが、Twitter(@uszksr)で自作よりそちらの宣伝を優先してしまうほど、次に紹介する『呪術廻戦』の大ファンです。

呪術廻戦

作:芥見下々

 主人公・虎杖悠仁(いたどり・ゆうじ)は、驚異的な身体能力を持つ高校生。オカルト研究会の活動の最中、呪霊を呼ぶ危険な呪物である両面宿儺(りょうめんすくな)の指と関わってしまう。呪いへの対応を学ぶ呪術高専の学生・伏黒恵(ふしぐろ・めぐみ)が呪物の回収に向かうが、力及ばず窮地に。

 オカ研の先輩と伏黒を救うため、虎杖は呪物の指を呑み込んでしまう。奇跡的に宿儺の力をその身に宿した虎杖は自身も討伐の対象となるも、すべての宿儺の回収を条件に猶予を受け、呪術高専へと転入することになる。

目と厨二心を惹く急転の異能バトル

 人間と呪い(呪霊)との戦いを主題とする漫画である呪術廻戦ですが、呪いという言葉のどんよりとした印象とは真逆、スピーディなアクションバトルが展開されます。

 呪霊に対抗するために呪いの力、呪力を用いる呪術師。その戦法は、肉弾戦あり、武器戦闘あり、異能あり。多彩に繰り広げられるバトルは、魅せゴマを意識しながらも読者の虚を突く緩急のある描かれ方により、速度と迫力を高めています。

 そして呪術を用いた異能の最たるものが、強者のみ扱える「領域展開」と呼ばれる空間支配能力。その威力は殺意MAX、こんな序盤から披露していいのかと思ってしまうような、まさに必殺技といえるもの。物語をガンガン進めていこうという熱量を感じさせます。

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僕らは何故『呪術廻戦』に魅せられるのか?

はじめまして、ライターの本田ホルマリンです。 現在週刊少年ジャンプで連載中の『呪術廻戦』という漫画はご存知でしょうか。 2018年の3月から週刊少年ジャンプで連載を開始して以来、着実に人気を集めてジャンプの看板作品としての立ち位置も見えてきた注目作です。 『全国書店員が選んだおすすめコミック』の第1位にも選ばれた実績もあるだけに、その面白さはお墨付き。 ここからは私、本田ホルマリンの主観100%で『呪術廻戦』の魅力を紹介したいと思います!

ダークな世界観に光る倫理と信念

 呪いというモチーフから想像がつくように、この漫画では「死」が日常に近いものとして描かれています。主人公の仲間であっても、助けるべき被害者であっても、あるいは主人公の虎杖本人であっても。敵は人間の負の感情から生まれた、悪意溢れる狡猾な呪霊。いつ誰に死が訪れるともわかりません。

 「オマエは強いから人を助けろ。オマエは大勢に囲まれて死ね。」虎杖一人に看取られて逝った、祖父の遺言にして、呪い。厳しくも温かいこの言葉が、彼が「死」について考える礎となっています。

 「死」に思いを馳せるとき、主人公のブレーキは、緩みます。「正しい死」という曖昧な理想を求める彼の行動は、時に非人間的にも見えます。信念は、自身の命さえ度外視して他者を救う優しさにも、呪霊に対する苛烈な戦意にもなって、一際に輝くのです。

 どうでしょう、興味を持っていただけましたか?

 『アクタージュ』は3巻、『呪術廻戦』は2巻しかコミックスが発売されていない、まだまだ新しい作品です(2018年10月現在)。これからさらに盛り上がっていくことは間違いありません。気軽にバックナンバーの購入ができる電子版のジャンプという手段もありますし、今からでも連載を追いかけてみてはいかがでしょうか。

※冒頭でご紹介した『銀魂』、『約束のネバーランド』の解説記事もご覧ください。

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