実をねじ曲げる推理漫画『虚構推理』の魅力に迫る

実をねじ曲げる推理漫画『虚構推理』の魅力に迫る

チートな能力を持つ主人公コンビが事件を解決

実をねじ曲げる推理漫画『虚構推理』の魅力に迫る

「虚構推理」は怪異の知恵の神になった少女と不老不死と未来予知の力を持つ青年が、怪異にまつわるトラブルを虚構の推理を使い解決する、怪奇ミステリー漫画です。

 

怪異の知恵の神「岩永琴子」

ヒロインの岩永琴子は世間一般の評価としては名家の出身ですが、11才の頃誘拐された時に目と足を欠損した状態で発見された過去がある、年齢より幼く見える美少女といったところです。

しかしその傷は怪異の知恵の神になったときに払った代償であり、彼女はあらゆる場所の怪異から姫として慕われ、彼らに手を貸す代わりに彼らから手を貸して貰う神様です。

ちなみに彼女が一目一足(いちがんいっそく)なのはクエビコという古事記に出てくる神様に由来します。実は一足や一眼は古来から神の条件や、神の言葉を聞く巫女の条件としても多いものなのです。

そんな代償を払い神となった彼女ですが、正直あまりメリットが多いとは思えません。情報収集や日常の細々した事に手を貸してはくれますが、ときに体を張ることもある神としての仕事は危険が多すぎます。それでも知恵の神をやるのは、怪異たちの世界にある秩序を守りたいと思っているからです。

そんな根本的には正義感のある性格の琴子ですが、お嬢様育ちのわりにざっくばらんな言動と気の強さが目立つ性格です。簡単に言うと見た目と内面のギャップがあるタイプのキャラクターでなんですが、可愛い容姿に対して九郎の元カノに対するわかりやすく若干の悪意が見える嫉妬心を平気で見せるような性格や、巨大な怪異にも挑む度胸はベタに見えてもやっぱり魅力的に感じるものです。

また彼女の特徴として、頭の回転のよさもあげられます。虚構を使い真実をねじ曲げるというのは、つまり真実以上に納得の出来る話を作り上げないといけません。怪異たちは情報収集には便利ですが、賢さは子供に知恵の神になってくれとすがる程度の知恵しかなく、虚構を作り上げるのは琴子自身なのです。

不死身の預言者「桜川九郎」

草食系な雰囲気でありながら奇妙な生命力を感じさせる青年・桜川九郎。彼は11才の時に怪異の肉を食べてその力を得ました。

彼が食べたのは言わずと知れた不老不死伝説を持つ人魚と、予言をして死ぬと言われる件です。
虚構推理画像4

件の肉を死なない件がいたら最強!みたいな発想が一族にあった為その肉を知らない内に食べさせられ、作られた彼ですが、期待されたものとは一点違う部分がありました。

彼は死なない件ではなく、どちらかといえば死んでも生き返る件です。Aを選んだ未来を読んでは死に、Bを選んだ未来を読んでは死ぬ。それを繰り返して正解となるものを引き当てるという戦法を取ります。その過酷な戦い方を淡々とこなす様子は、ダークヒーロー的なかっこよさがありますよ。

そんな九郎と琴子の関係ですが、甘い関係だった元カノに比べるとかなり雑に扱っているように見えます。しかしそこには見えにくいですが、信頼もありますし守りたいという気持ちもあります。

人外である九郎をなんの躊躇いもなく受け入れその怪異を、単純にスゴいものとして評価する琴子と、琴子の作った虚構を真実に出来る可能性が僅かでもあるのなら自分が掴みとってくるという姿勢の九郎。
そんな二人の関係には、きっとトキメクと思います。

禁じ手屈指のミステリー

さて、この作品はタイトルに「推理」と入っていますが、一般的な推理物とは異なります。探偵役が推理をしてその内容で万人を納得させるものではなく、推理をしてわかった真実は皆には語りません。本当の事は横において、それっぽい理屈を話して他の人たちを納得させると言う話です。

オカルト要素があるミステリーはありますが、それはオカルトに一定の法則があり、それを前提として進められるものです。代表的なものだと、『DEATH NOTE』がそれに当たります。現実には存在しないルールでも、そこに法則があればそれに基づいた推理は可能ですし、読者も展開を読むことが出来るものです。

また『魔人探偵脳噛ネウロ』のように主人公がオカルトな存在でも他が常人ならそれはそれで話が成立しますが、オカルト対オカルト状態です。

そして、この作品のオカルト要素は法則やルールがなく、言ってしまえば何でもありの理不尽なものです。そもそも主人公コンビが怪異から協力を得て過去の情報収集も出来る琴子と、殺されようと死なず予知能力もある九郎で、オカルトとしてはかなりチートです。

そんなチート能力を持った、オカルト展開なら負けようがないキャラクターが登場するのに、あえて推理という枠の中に話を置くのが面白いですよね。

異常に理屈をつける面白さ

この話のイメージとしては「呪殺が出来る能力者の犯人がいて、殺人を犯したその人を捕まえるには?」といったものが近いと思います。

現在の法律では裁かれることのない呪殺。しかし呪いが証明できないから処罰されないだけで、悪意をもって人を殺しているのだから殺人の要件は満たしています。ではこの人をどうにかして捕まえようとすると、どんなやり方があるでしょうか?

例えば証拠を捏造して、犯人が普通の手段で殺人を犯したと警察に思い込ませるやり方もあるでしょう。呪殺自体を証明することが出来るのならそれでも良いですし、もし同じような超能力があるなら被害者の幽霊を呼び出して犯人の罪悪感を刺激し、自首を促すことも出来るかもしれません。

要はどんなものであれ「呪殺事件の発生」から「犯人逮捕」までの間を、皆が納得できるもので埋めてしまえば良いのです。

もちろん、普通に考えてその間は埋まるものではありませんが、そこは怪異の知恵の神と不死身の預言者です。例えに出した適当なものではなく、もっと緻密な琴子が考え出した虚構を、九郎が何度も死にながら掴み取る瞬間は、バトル漫画のような燃える展開とミステリーの謎解きが決まった時のスッキリした感覚を同時に味わえる、不思議な気分になりますよ。

また解決パートも普通の推理ものと違い殴り合うような勢いがある展開で、読んでいてなんとも言えない爽快感があります。